【BOOK】物事の見方が変わると、過去が変わる

メンタルや心理的な問題へのアプローチとして、「内観」というものがあるのを知っていますか。なぜ私がそんなことを知っているかというと…4年ほど前に私も参加したことがあるからです。(笑)

 

どんなことをするかとざっくり話すと、静かな環境で畳半畳分のスペースを屏風で仕切り、朝6時から夜9時までその屏風の中で過ごします。家族などの身近な人を対象に相手の立場に立って「相手にしてもらったこと・相手にしてあげたこと・相手に迷惑をかけたこと」を自分の幼いころから順番にひたすら思い出すというものです。

期間は7日間続けるのですが、その期間は携帯や本などを預け、一日数回・数分の面談以外は人と話すこともできません。

といった感じで、とても想像できないほど世界と切り離され、自分のことのみを考えます。

こうして自身の過去を調べることで、ずいぶん物事を自分都合で解釈していたことに気づきます。そして、過去が変わります。

 

実際に自分も行いましたが、ずいぶんと自分の今までの人生の見方が変わる経験でもありました…その話は今度また機会があれば。(笑)

 

エミリの小さな包丁

エミリの小さな包丁

 

 僕のとても好きな作家に森沢明夫さんがいます。

千葉の船橋出身ということで、親近感もあり、小説のなかに西船橋が出てきたりもします。

 

学生の頃は小説を中心に本を読んでいたのですが、どうしても働きだしてからは新書や啓発系を読むことが多くなりましたが、森沢明夫さんの本だけは新刊がでるとすぐに買っています。

とても心理描写が繊細で、優しい文体がとても好きです。

森沢さんの書く文章の中には、とても心理学的な内容が多いようにも感じています。

 

そして「エミリの小さな包丁」は僕のなかで、エミリの内観の物語といえるかと思っています。

主人公のエミリは職場での不倫を機に、心を崩し、おじいさんの家に転がり込みます。

舞台は龍浦という場所ですが、きっと千葉のどこか、僕の中では勝浦のあたりをイメージしながら読んでいました。

 

今回の主人公のエミリもそうですが、森沢さんの小説に出てくる登場人物の心理はとても、とても分かりやすい。そして、まさに現実にあり得る心だなと思います。

幼いころに得られるはずが、手にすることができなかったものを大人になっても無意識的に追い続ける人。なぜか自分でもわからないけど辛く生きている人。

僕をはじめそのような人って非常に多いと思います。気づいている・気づいていないは別に、無意識に欲しかったものを追い続ける。これって人間のそれだと思います。

 

そんなエミリが、ただ淡々と生活するおじいさんとの交流を通して、心を立て直していく物語。海で釣った魚を料理し、自然に生きるおじいさん。

そんなおじいさんとの会話を通して、自分が得られなかったと思っていたものの見方が変わり、自分を縛っていた過去が変わる。そして、新しく歩き出す。

 

まさに内観のようなお話です。

小説の港町の空気感がとても好きです。

 

抽象的なレビューになってしまいましたが、お許しください。(笑)